2012年09月09日

フィギュアと写真の著作権。考えたこと・思ったこと

ウチにしては、検索ワード「フィギュア+写真+著作権」でいらっしゃる方の割合が多いので、ちょっと続きを書いてみます。続きというか、前回の記事を書く際に調べた事や考えた事ですね。改めて結論を書く事はしませんので、そこは前回の記事をお読みください。
なお、書いている人は法律の専門家でも、その教育を受けた者でもありません。ただの読み物として読むくらいがちょうど良いかと思います。

文中の判例については、主に[KLS 著作権情報館]著作権重要判例要旨を参照させていただいた他、番号をGoogleで検索するなどして追加情報を探したりしました(こちらはさすがに覚えてません…)。


<フィギュアの著作権>
まず、フィギュアに著作権が認められるかどうかという観点があります。「えっ?!」と思われた方がいるかもしれません。というか、私がそうでした。
さらに、元となったキャラクターやイラストに関しても、著作物として認められるかどうかという観点もあります。これも意外かも知れません。

著作権法第二条の一号(リンク先は公益社団法人 著作権情報センター)に、「著作物」とは何なのかが定義されています。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
ここで注意したいのは、これはあくまで「著作権法で定める定義」で、オレルールによる定義は認められず、例え作者が「これはオレの著作物だ」と主張しても、この定義から外れていれば著作権法によって保護される事はありません。つまり、著作権法とは、この定義に於ける著作物を守るものだという事です。

フィギュアの場合、著作権が認められるには「思想又は感情を創作的に表現した」「美術の範囲に属するもの」である必要があります。
元となるマンガやアニメは著作物である事がほぼ疑いないのですが、その中のいちキャラクターが著作物として認められるかどうかは、よくわかりません。判例も、認められたもの(東京地方裁判所 昭和46(ワ)151)と認められなかったもの(最高裁判所第一小法廷判決 平成4(オ)1443)があるようです。

美術の著作物については、著作権法第二条の第2項も影響します。
この法律にいう「美術の著作物」には、美術工芸品を含むものとする。
これは元々は皿などを保護するための条項らしいのですが、つまり大量生産品であっても「思想又は感情を創作的に表現」していれば著作権法で保護されるという事です。

そして、フィギュアの原型の一部に著作権が認められた判例(大阪高等裁判所 平成16(ネ)3893)があります。ただし裁判官に「これ元のイラストのまんまじゃね?」と思われたものには、著作権が認められませんでした。
これ以外にも、今年の5月に改造フィギュアを販売した者が著作権法違反で逮捕されています。裁判の行方が気になるところです。

詳細な説明は省いて簡単にまとめます。単純に「全てのフィギュアの著作権はこう扱われる」とはならず、個々の事例別に判断されると思われます。判例を鑑みると、それは以下のように大別されるでしょう。

(1)キャラクターは著作物(例:オリジナルキャラなど)であり、さらにフィギュアは著作物である(条件:思想又は感情を創作的に表現している事)
(2)キャラクターは著作物であるが、フィギュアは著作物ではない
(3)キャラクターは間接的な著作物(条件:元となる物語を想起させる)であり、さらにフィギュアは著作物である
(4)キャラクターは間接的な著作物であるが、フィギュアは著作物ではない
(5)キャラクターは著作物ではないが、フィギュアは著作物である
(6)キャラクターは著作物ではなく、フィギュアも著作物でない

(1)〜(5)の事例ならば「フィギュアは著作物の複製である」と言えるでしょう。ただし、(6)の事例であったとしても、フィギュアの場合は「著作権の範疇にないから、写真とかアップしても大丈夫」と単純にはいかないと思います。意匠法(これは多分ない)や不正競争防止法という別の法律の保護範疇にあるようです。不正競争防止法のほうは、主に海賊版を取り締まるものですので、写真のアップロードに関しては著作権法よりも緩い制限になる筈ですけどね。

さんざん書いておいて何ですが、この辺ややこしいので、素人が手を出すべきじゃないんでしょうね。あはははは……


<写真の著作権>
写真の著作権については、まず「それが著作物か否か」という観点が第一にあり、そこに「アマチュアが撮影した写真にも著作権が認められるか」という観点が加わります。

まず、写真が著作物か否かについては前述のように「思想や感情を創作的に表現したもの」かどうかで判断されます。
ぶっちゃけて言えば、カメラは「被写体を画像として忠実に複製する機器」という事もできるため、写真そのものは著作物ではない、という考え方もあるわけです。しかし、そのアングルやライティング、絞り、シャッタースピードなど様々な工夫をした事で、著作物だと認められた判例がいくつも(一例:横浜地方裁判所 平成16(ワ)3460など)あります。

第二の観点である「アマチュアが撮影した写真は著作物かどうか」については、そのままズバリの判例(仙台高等裁判所 平成7(ネ)207)があり、アマチュアが撮ったものであろうと、そこに創作性があるならば著作物として認められます。

<つらつらと考えた事>
以下、まるっきり私見になります。上に書いた事よりもさらに根拠の薄い内容です。

まずひとつめ。私なんかは再現率の高いフィギュアを見ると「スゲー!これ元絵に忠実に立体化されてる!」なんて思うんですが、そういうのは著作権では守られにくいようです。つまり「ポーズやらが元絵そのままだから、その複製物に過ぎない」とされてしまうわけです。ちなみに、複製の上手・下手については著作物か否かの判断には加味されません(そうでなければ、質の悪い贋作が取り締まれない事になったりします)が、下手なほうが「アレンジ」として見なされて、フィギュアの著作権が認められる可能性が高いのかもしれません。
理屈は分かるんですが、釈然としない気分になってしまいますね。

ふたつめ。可動式フィギュアに著作権が認められるかどうか、際どい気がします。というのも、フィギュアはただでさえ「アングルが創作的」という主張がやりにくいんですが、それに加えて「ポーズが創作的」と主張しにくいわけです。可動の工夫については特許法などにその守備範囲を譲る事になります。
理屈は分かるんですが、釈然としない気分がさらに強くなります。

いやまぁ、そう単純に結論できないでしょうし、裁判で通用するかどうかを別にすれば反論も考え付きます。そして、単純に「著作権を強化すべきだ」なんて言うつもりはありませんし、私としてはむしろ「フェアユースしやすいようにしてくれ」と思っているくらいなのですが、思っていたより著作権法はフィギュアを守ってくれないんだ、という事実にはびっくりです。
もっとも、前にも書いたとおり、この辺は裁判してみないと分からないグレーゾーンだと思います。じゃんじゃん裁判して白黒つけてくれ、とは思いませんが、しかし個人で(訴訟まではいかないにせよ)リスクを負うのも勘弁してほしいものです。やっぱり、メーカーさんにガイドラインつくってほしいなぁ、なんて思うんですけどね。


ラベル:フィギュア
posted by 七篠権平衛 at 19:20| Comment(0) | フィギュア | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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